はじめに
認知行動療法のワークシート3枚目でスキーマというものを扱うのですが、そのスキーマと2枚目の認知の歪みがわかりにくいので3枚目に行く前にスキーマについて少しお話します。
認知の歪みとスキーマについて簡単に紹介
認知の歪みとは、現実を認知する際に、個人の感情や信念、経験、文化的背景などが影響して、現実とは異なる認識をしてしまうことを指します。
例えば、自分自身がうつ病であるという認知の歪みがある場合、自分自身や周りの出来事を否定的に見てしまい、自己効力感や希望を失うことがあります。
一方、スキーマは、現実を認知する際に、過去の経験や知識、信念、価値観などが作り出す「枠組み」のことです。
例えば、ある人が「おじいちゃんは優しくて、温かみがある存在」というスキーマを持っている場合、おじいちゃんが本来持っていない性格や行動に対しても、それを補完し、自分なりの解釈をすることができます。
これらの認知の歪みやスキーマは、人の認知に大きな影響を与えるため、認知行動療法や心理療法においても重要な概念となっています。
現実に起きていることを歪めてみる認知の歪み、自分の中にある情報から物事を決めるスキーマの違いがわかるでしょうか?先に進みます。
認知の歪みについて
認知の歪みの定義と種類の紹介
認知の歪みとは、現実を客観的に捉えることができなくなることであり、個人の感情や信念、経験、文化的背景などが影響して、現実とは異なる認識をしてしまうことを指します。
具体的には、以下のような種類があります。
- フィルタリング:ある出来事や情報の中から、自分にとって都合の悪いものを選択的に取り出し、それに焦点を合わせることで、現実を歪めてしまうことを指します。
- 極端な思考:ある出来事を極端に評価したり、二元的な考え方をしてしまうことで、現実を歪めてしまうことを指します。
- 過大な一般化:ある出来事をもとに、全体的な判断を下してしまうことで、現実を歪めてしまうことを指します。
- 個人化:ある出来事を自分の責任や影響によるものとして捉え、現実を歪めてしまうことを指します。
- マインドリーディング:他人の考えや気持ちを推測してしまい、現実を歪めてしまうことを指します。
- 小さなことを大きく見る:些細な出来事に対して過剰に反応し、現実を歪めてしまうことを指します。
- 予測的誤謬:将来の出来事や結果を予測して、それに基づいて現実を歪めてしまうことを指します。
これらの認知の歪みは、認知行動療法や心理療法において、現実的な認知を取り戻すために取り組まれます。
これはワークシート2の復習です。でも、言葉が難しいので私はワークシート2のように置き換えました。内容は同じです。
認知の歪みが生じる原因の説明
認知の歪みが生じる原因は、個人の感情や信念、経験、文化的背景などが影響していると考えられています。
例えば、過去の経験が現在の判断に影響することがあります。
過去に何らかのトラウマを経験した人は、同じような出来事に直面した際に、過剰に反応してしまうことがあります。
また、自己肯定感が低い人は、自分にとって都合の悪いことに過剰に反応してしまう傾向があります。
さらに、文化的背景によっても、認知の歪みが生じることがあります。
例えば、西洋文化では自己主張が重視されるため、自己を正当化するために現実を歪めることがあるとされています。
一方、東洋文化では集団や家族の利益が重視されるため、自己を犠牲にすることで現実を歪めることがあるとされています。
以上のように、認知の歪みが生じる原因は多岐にわたります。
個人の背景や経験によって異なるため、認知行動療法や心理療法においては、個別に対応策を立てる必要があります。
スキーマの影響について
スキーマの定義と役割の紹介
スキーマとは、個人が持つ既存の知識や経験をもとに、外界の情報を理解・解釈するための心の枠組みのことです。
つまり、人が情報を処理する際に、既存のスキーマを用いて、新しい情報を理解しようとするのです。
スキーマは、個人の経験や文化的背景に基づいて形成されます。
例えば、ある人が「犬」というスキーマを持っている場合、彼女は犬の特徴を知っており、それが彼女が犬を見た時に自動的に活性化されます。
そのため、彼女は犬の存在や行動を正しく理解し、必要に応じて適切に対処することができるのです。
スキーマは、人が情報を処理するために非常に重要な役割を果たしています。
例えば、新しい情報が与えられた場合には、それを既存のスキーマに当てはめることで、情報を理解しやすくなります。
また、スキーマは情報の処理を促進するため、人が情報を簡略化する際にも役立ちます。
そのため、人々は膨大な情報を効率的に処理し、複雑な状況に対処することができます。
しかし、スキーマは常に正確であるわけではありません。個人の経験や文化的背景に基づいて形成されたスキーマは、認知の歪みを引き起こすことがあります。
例えば、ある人が「若い女性はヒステリックだ」というスキーマを持っている場合、彼は若い女性が感情的であると解釈する傾向があります。
そのため、彼は若い女性とのコミュニケーションに問題が生じることがあるのです。
したがって、スキーマは情報処理に重要な役割を果たすと同時に、認知の歪みを引き起こす要因ともなります。
このことは、心理学において重要なテーマの一つとして研究されています。
もともと持っている情報スキーマが今起きたことを歪ませ認知の歪みがおきることがあります。
スキーマが影響する認知的な活動について
知覚
スキーマは、外界からの情報を理解する上で重要な役割を果たします。知覚においても、スキーマは大きな影響を与えます。
スキーマによって、私たちは外界からの情報を受け取った際に、それをどのように解釈するかが決定されます。
たとえば、ある人が「犬」という言葉を聞いた場合、その人が持つ犬に関するスキーマに基づいて、犬のイメージが思い浮かびます。
このイメージは、その人がこれまでに経験してきた犬の種類や特徴、犬に対する感情などによって形成されます。
このように、スキーマは知覚において、私たちが受け取った情報を解釈するためのフレームワークとして機能しています。
スキーマは、私たちが受け取った情報を処理する上で、フィルターのような役割も果たします。
スキーマによって、私たちはある種の情報に注目し、他の情報には無意識的に目を向けないことがあります。
たとえば、ある人が「犬」という言葉を聞いた場合、その人が持つ犬に関するスキーマに基づいて、犬の種類や特徴についての情報に注目する一方で、犬に関する負のイメージがある場合には、それについての情報には無意識的に目を向けないことがあります。
つまり、スキーマは知覚において、情報を解釈するためのフレームワークとして機能すると同時に、私たちが受け取った情報をフィルターする役割も果たしています。
事前に持っている情報、スキーマが自分にとってマイナスである場合、スルーする機能もあるということです。
言語の使用
スキーマは、言語の使用にも大きな影響を与えます。
言語の使用において、スキーマは、言葉や文法の理解を支援する役割を果たします。
たとえば、ある人が「犬は走る」という文を聞いた場合、その人が持つ「犬」に関するスキーマに基づいて、犬が走ることが一般的であるという理解が生まれます。
このように、スキーマは、言語の理解において、言葉の意味や文法の構造を正しく理解するためのフレームワークとして機能しています。
また、スキーマは、言語の使用において、コミュニケーションの効果を高める役割も果たします。
たとえば、ある人が「私は犬が好きです」という文を発言した場合、聞き手も同様に犬に関するスキーマを持っている場合には、この文は容易に理解できます。
このように、スキーマは、言語の使用において、情報の共有やコミュニケーションの円滑化にも役立っています。
ただし、スキーマは、言語の使用においても認知の歪みを引き起こす可能性があります。
ある人が特定の文化に属する言語を話す場合には、その文化に特有のスキーマに基づいて、情報の解釈が歪められることがあります。
また、スキーマによって、ある言葉や表現が、ある種のステレオタイプや偏見を引き起こすこともあります。
スキーマによって聞いた言葉がマイナスに聞こえたりすることもあります。
思考
スキーマは、思考においても大きな影響を与えます。思考は、外界の情報を取り込み、それを処理して新たな知識を生み出す過程であり、スキーマはその過程を支える役割を果たします。
具体的には、スキーマは、新しい情報を受け取ったときに、それを既存の知識と結びつけることで、理解を深めたり、新たな知識を獲得したりするために利用されます。
たとえば、ある人が新しい食べ物を食べた場合、その人が持つ食べ物に関するスキーマに基づいて、その食べ物がどのような味や香りを持っているかを推測することができます。
また、スキーマは、問題解決にも大きな役割を果たします。問題解決とは、目標を達成するために必要な手順を考え出すことであり、スキーマはその過程を支援するために利用されます。
たとえば、ある人が新しいプロジェクトに取り組む場合、その人が持つプロジェクトに関するスキーマに基づいて、目標や手順を考え出すことができます。
ただし、スキーマは、思考においても認知の歪みを引き起こす可能性があります。
ある人が特定のスキーマに固執してしまう場合、新しい情報を適切に処理できず、思考が偏りやすくなることがあります。
また、スキーマによって、ある種の先入観や偏見が生まれることもあります。
1つの間違ったスキーマに固執すると歪んだ結果を生み出してしまうことがあります。
スキーマと認知の歪みの関係
スキーマが認知の歪みに与える影響
認知の歪みを強化する
スキーマが認知の歪みに与える影響は、スキーマが形成される過程で個人の経験や文化、社会的環境などの要素が反映されるため、それぞれの人が持つスキーマによって認知の歪みが生じることがあります。
例えば、ある人が「外国人は言葉が通じない、怖い、不潔だ」というスキーマを持っている場合、その人は外国人に対して偏った印象を持ってしまう可能性が高くなります。
このようなスキーマは、外国人と接する度に再確認され、認知の歪みを強化してしまうこともあります。
また、スキーマが形成された場合、新しい情報を受け取る際に、そのスキーマに従って情報を解釈しようとするため、本来の意図とは異なる解釈をすることがあります。
これにより、誤った認知や偏見が生じることがあります。
つまり、スキーマは認知の歪みを強化することがあり、正しい情報や客観的な判断を妨げる可能性があるため、注意が必要です。
認知の歪みを減少させる
先に述べたように、スキーマが認知の歪みに与える影響は大きく、偏った印象や誤った解釈を引き起こす可能性があります。
しかし、スキーマを使いすぎることが認知の歪みを引き起こすのであれば、スキーマを減らすことが認知の歪みを減少させる手段になります。
具体的には、以下のような方法が考えられます。
スキーマについて知識を深める
自分が持っているスキーマについて、どのような要素から形成され、どのような偏りを持っているのか、知識を深めることが重要です。
それによって、自分の認知の歪みを自覚し、その認知の歪みがどのように現れるのかを認識することができます。
多様な情報源から情報を入手する
スキーマに合致する情報だけでなく、異なる情報源から情報を入手することが大切です。
これによって、自分のスキーマにない視点や考え方を知ることができ、認知の幅を広げることができます。
自分自身を客観的に見る
自分自身がどのようなスキーマを持っているのか、自分を客観的に見ることが必要です。
自分がどのような考え方をしているのか、自分の行動がどのような影響を与えているのかを意識し、自己反省を行うことが大切です。
意識的な思考
スキーマに基づいた思考ではなく、意識的に自分自身をコントロールして考えることが大切です。
認知的な歪みが生じるときには、自分自身に対して問いかけをすることで、客観的に考えることができます。
これらの方法を実践することで、自分自身の認知の歪みを減少させることができます。
これについてこれからワークシート3と4で行っていきます。
スキーマの活用法
スキーマを活用した認知療法の紹介
スキーマを活用した認知療法は、認知行動療法の一種であり、特定の問題を抱える患者さんが自分自身の認知スキーマ(自分自身の信念、思考、感情、行動パターンなどの集合体)を理解し、修正することを目的としています。以下に、スキーマを活用した認知療法の一般的な流れを紹介します。
スキーマの識別
- 患者さんは、自分自身のスキーマを理解するために、それらが問題の原因であることを認識する必要があります。
- セラピストは、患者さんの思考や行動パターンを評価し、スキーマを特定します。
スキーマの認識
- スキーマがどのように影響を及ぼすかを認識することは、スキーマを修正するために不可欠です。
- 患者さんは、自分自身のスキーマがどのように形成され、どのように現れるかを理解することが重要です。
スキーマの修正
- スキーマを修正するために、患者さんは、自分自身のスキーマに基づく思考や行動を変更することを目指します。
- セラピストは、新しいスキーマを形成することを促し、より健康的な行動や思考パターンを作り出すことを助けます。
スキーマの維持
- 最後に、患者さんは、自分自身のスキーマを維持するための戦略を開発することが重要です。
- セラピストは、患者さんに、スキーマに基づく思考や行動が再発することを防ぐために、適切なストレス管理や自己ケアの方法を教えます。
スキーマを活用した認知療法は、長期的な問題に対処するのに役立ちます。スキーマは、患者さんが持つ自分自身の信念や思考パターンを理解することによって、より健康的な行動や思考パターンを作り出すために役立ちます。
これは専門家と行うもので心療内科などに通っている人は先生やアドバイザーにこのやり方を提案してもよいでしょう
スキーマを意識的に変える方法の紹介
スキーマは、個人の経験や環境によって形成されるため、一度形成されたスキーマを完全に変えることは容易ではありません。しかし、スキーマを意識的に変えることは可能です。以下にいくつかの方法を紹介します。
現実の観察と比較する:スキーマに基づく認知の歪みを意識することは、それを修正する第一歩です。
現実に起こっていることと比較して、スキーマに基づいて行動するかどうかを考えることが大切です。
新しい経験を積む:スキーマは新しい経験によって変化することができます。新しい環境に身を置いたり、新しい人との関係を築いたり、新しいスキルを身につけたりすることで、既存のスキーマを修正することができます。
計画的な思考:スキーマに基づく認知の歪みを修正するためには、計画的な思考が必要です。
例えば、自分自身に対して「私は失敗した」という負のスキーマがある場合、失敗した状況について再評価し、過度に負の評価をしないようにすることが大切です。
専門家の支援を受ける:スキーマを意識的に変えることは困難な場合があります。このような場合は、心理療法におけるスキーマ療法を受けることが有効です。
スキーマ療法は、患者がスキーマを理解し、修正するための具体的な方法を提供することで、認知的な歪みを軽減することを目的としています。
- スキーマに関する新たな情報を学ぶ:スキーマは人々が得た経験から形成されるため、そのスキーマに関する新しい情報を学ぶことでスキーマの歪みを矯正することができます。
- 例えば、特定の人種や文化についてのスキーマが偏っている場合、その人種や文化について正確な情報を学ぶことで、スキーマを修正することができます。
- 認知行動療法(CBT):CBTは、認知的なスキーマの歪みを矯正するために使用される一般的な治療法の一つです。
- このアプローチでは、患者は自分自身の思考と感情に対する注意を向け、それらを修正する方法を学びます。
- マインドフルネス瞑想:マインドフルネス瞑想は、自分自身の思考や感情に対する意識的な注意を促進することに焦点を当てた瞑想の一形態です。
- これにより、自分自身のスキーマを認識し、その歪みを減少させることができます。
- スキーマ治療:スキーマ治療は、スキーマに関する問題を扱うための専門的な治療法の一つです。
- この治療法では、スキーマに関連する過去のトラウマや負の経験に対処し、スキーマを修正するための技術を学びます。
これらの方法を使用して、スキーマの歪みを修正することができます。
ただし、スキーマは人々の認知的な枠組みを形成するため、その修正には時間がかかることがあります。
しかし、スキーマの修正は、より健康的な認知と行動を促し、より充実した人生を送るための大きなステップとなります。
ここで出てきていることがまさにゴールと言えることです。
認知行動療法だけでなくマインドフルネスなども取り入れ総合的に歪んだスキーマを作らないようにして認知の歪みを取り除きます。
スキーマを活用する上での注意点の説明
スキーマを活用する上での注意点としては以下のことが挙げられます。
- スキーマは複雑な構造を持っているため、スキーマの変更には時間がかかる可能性があることを理解することが重要です。
- スキーマの変更を急いだり、無理に変更しようとすることは避けましょう。
- スキーマを変更する際には、専門家の支援を受けることをおすすめします。心理療法士やカウンセラーなどの専門家は、スキーマを効果的に変更するためのテクニックやアドバイスを提供してくれます。
- スキーマを変更する際には、自己承認感情を高めることが重要です。自己承認感情が高まると、新しい情報を受け入れやすくなります。
- スキーマを変更するためには、自分自身を肯定的に捉えることが大切です。
- スキーマを変更する際には、新しい情報や経験を積極的に取り入れることが必要です。
- 新しい情報や経験を通じて、スキーマを拡張し、変更することができます。
- スキーマを変更するためには、継続的な努力が必要です。
- 新しい情報や経験を取り入れることを継続し、自己承認感情を高めながら、スキーマを変更することが重要です。
以上が、スキーマを活用する上での注意点です。
スキーマを変更することで、認知の歪みを改善し、より健康的な思考や行動を促すことができます。
しかし、スキーマの変更は簡単ではありません。継続的な努力と専門家の支援が必要です。
まとめ
スキーマと認知の歪みの関係を再確認する
スキーマは、個人の認知において基盤となる構造化された知識のことであり、外界の知覚や言語の使用、思考などの認知的な活動を支えています。
このスキーマが、認知の歪みを引き起こす原因の一つとされています。
認知の歪みとは、情報処理における歪みや欠陥のことであり、個人の認知に影響を与えます。
スキーマによって、人々は現実を解釈し、情報を処理する際に、既存の知識や経験に基づいた思考パターンに従って行います。
しかし、この思考パターンには、現実と異なる誤った情報が含まれることがあり、それが認知の歪みを引き起こす原因となります。
例えば、「自分は失敗ばかりする人間だ」というスキーマを持っている人は、自分の失敗を過大評価してしまうことがあります。
また、「外国人は危険である」というスキーマを持っている人は、外国人に対して偏見を持ってしまうことがあります。
したがって、スキーマが認知の歪みを引き起こす可能性があるため、スキーマに意識的に取り組むことが重要となります。
認知療法においては、スキーマの変容を促すことで、認知の歪みを改善し、より健康的な認知を促すことが目的とされています。
認知の歪みとスキーマの違いがお分かりいただけたでしょうか?
また、これから認知行動療法を通してどこを目指すのか?
マインドフルネスなども関連して使えることなど今日は情報がたくさんでしたが整理ができたでしょうか?
吹き出しをヒントに各項目を何度か見直してみてください。それでは次回はワークシート3に進んでみましょう。
広告